梅干しを漬ける用の、完熟の南高梅が和歌山から届きました。部屋中に完熟梅の甘い香りが充満していると、とても幸せな気分になります。もう少しだけ追熟させようと思ってキッチンの隅に置いているのだけど、横を通りがかる度に、袋をのぞいて、そのかわいい色と香りに癒されています。
こんなに甘い香りをさせて、黄色くかわいく色付いている実に、明日は塩をしなければなりません。梅干し作りは、水が上がってくるのを見ているのも、紫蘇で赤く染まっていくのを眺めるのも、最後に天日に干すのも、その工程がすべて好きだけど、最初に塩を振りかけるのだけは、梅に申し訳ない気持ちになるから気が重いです。こんなことをするなんて、まるでひとでなしの所業だな、とさえ思ってしまうのです。
梅干しを漬ける時にはいつも、この世ではじめて梅干しを作ることを思い付いた誰かのことを考えます。いったいどんな流れで、こんなにもかわいくて甘い香りをさせている実に塩をして、漬物にしようだなんて思い付いたんだろうなぁって不思議な気持ちになるのです。そして同時に、でもその誰かのおかげで、大好きな梅干しが今この世に存在するわけで、あのとき梅干しを発明してくださってありがとうって気持ちにもなります。